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【お勧め泡盛・島酒】バーテンダーズチョイス ~米島(2020年限定出荷)~

泡盛

那覇市泉崎でモルト・泡盛古酒専門店 Bar Tasting Clubを営むバーテンダー、儀部頼人が珠玉の島酒をテイスティングしながらご紹介する企画「バーテンダーズチョイス」

年に一度の限定酒

今回は「年に一度の限定酒」をご紹介。 

米島酒造 米島(2020年限定出荷) 40度720ml ¥3,580

毎年出来上がった泡盛の味と香りをボトルデザインに反映して本数限定で販売する希少な銘柄。

造り手曰く、今年は味と香りのイメージをオレンジとブルーで表現しており、「瓶熟成を楽しんで欲しい。」とのこと。 

毎年、メーカーからは具体的なテイスティングコメントはなく、具体的な味の説明をしないのは、少しでも無駄な先入観を省き、より感覚を研ぎ澄まし味わって欲しいとの想いがあるという。

とは言え、全く味がわからなくては手が伸びるはずもなく、筆者がその謎を解き明かしてみたい。 

ストレート 

米島 ストレート

香り ~ふわっとしたお米の香り~

まずはふわっとしたお米の香りが鼻腔に届く。そしておこげの様な香ばしさと、草原の青葉の様な香りが入り交じり、最後に雨が降り始めた道路の様な香りを感じる事が出来る。 

味 ~フラットな性格で安心して飲み続けられる~

口に含むと「辛口の酒だ」という第一印象。ほのかに甘く、トロっとした液体はゆっくりと舌の上で練り歩き、さながら花魁(おいらん)道中(どうちゅう)である。

最初に魅了された、甘く、白粉(おしろい)で化粧されたそのあどけないと思われた表情は、グラスの中で開くにつれ、ソルティーさを帯びるようになり、道中が終わるころには神格化されるほどの大人の表情を見せるのだ。

彼女らの人生をなぞらえたような、そんな物語さえ頭に浮かんでくる酒である。 

全体的には意表を突くような千変万化な酒ではなく、フラットな性格で安心して飲み続けられる酒質である。 

水割り ~スッキリとした印象~

米島 水割り

青葉の印象が強くなり、スッキリとした印象で飲める。

変に自己主張をしないので、食中や、飲み会などで、会話を引き立ててくれるだろう。
主張の強い酒はついつい会話を止めテイスティングをしてしまうのである。 

炭酸割り ~「微炭酸」が合う~

米島 炭酸割

今回試して分かったのは「微炭酸」が合うということ。

炭酸水を注ぐ前に、ペットボトルを揺さぶるなどして炭酸を弱めて欲しい。
「飲んでいることを忘れるような」一体感。明るい時間からでもスイスイ飲めてしまう。

これは危ない、、、メーカーとしてはビン熟成を楽しんで欲しいとのコンセプトなのに、一瞬で1ビン空いてしまうだろう。

オンザロック ~甘さが際立つ~

米島 オンザロック

まず甘さが際立つ。これは酒の温度が下がったため、香り立ちが抑えられ味覚にゲインが集中するからであろう。

十分なボディである。喉の奥に流し込んだ後、一呼吸する際に鼻から抜ける香りにも旨味が乗っているかのようである。 

総評 ~一言で言えば「温故知新」~

米島酒造の酒は一言で言えば「温故知新」

古き良き時代の個性のある泡盛の味を踏襲しながらも、年に一度の限定酒やハイセンスなボトルデザインなど、次々と新しいことに挑戦している。

同じ島内には「久米島の久米仙酒造」という泡盛売上高トップを誇る大企業があるにもかかわらず順調に売上高を伸ばしている。これは米島の泡盛造りが「本物」である証である。人は「本物」の仕事に敬意を表し、またそこに惹かれていくのである。 

今回は現地取材にも行った米島酒造の泡盛とあって、現地の空気感や作り手さんのお話を何度も想起しながらのテイスティングでした。上記のテイスティングノートをご覧になって「うまそぅ~!」と思ったみなさん、詳しくは以下をご確認ください♪ 

米島酒造株式会社 

住所:〒901-3123 沖縄県島尻郡久米島町大田499
創業:1948年
会社設立:平成26年10月16日
TEL:098-985-2326
FAX:098-985-2328
WEB:https://yonesima.jp/ 

Photographs & Text by 儀部 頼人(Yorito Gibu)