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【お勧め泡盛・島酒】バーテンダーズチョイス ~原酒太平41番44度~

泡盛

泡盛メーカーの中でも「知る人ぞ知る」隠れメーカーの津波古酒造。ほとんど宣伝などをやらないので、津波古酒造周辺に住んでいる人ですらその存在に気付かないほど。 

製造もほぼ一人で行っているマイクロディステラリー。ツウ好みのしっかりとした泡盛を作っており、泡盛マニアの間では再注目の蔵元。 

しかしながら去年、残念なことにその一人で製造を担当していた杜氏が急逝した。それ以来製造は行われていない。プレミア必至の蔵元である。 

今回は各蒸留段階を5つに分け、それぞれの比率を変えてブレンドし、無加水で44度に調整した「原酒太平シリーズ(全41種)の「原酒太平(041番)」をテイスティングしてみたい。ブレンド比率は「初留側← 0:0:55:0:45 →後留側」である。 

原酒太平41

水割り

原酒太平水割り

原酒由来の濃厚な香りが十分に残り、非常にオイリーである。舌の上で味が広がり、後から綿あめの様な甘さがやってくる。このボトルは蒸留からある程度の時間は経過しているので、蒸留直後に必ず含まれるガス臭は抜けているが、まだまだ新酒のフレッシュ感を感じる。ただ、個人的には心地よい飲み口である。 

ストレート

香り

豚の角煮にも似た、甘く濃厚で厚みのある香り。開いてくると津波古酒造特有のキノコの様な香りに、バタークッキーの様な甘い香りも混ざる。スモークチーズの表面の様な香りもある。この濃厚な香りは、後留側の度数が低いが濃厚な酒質をクリアな酒質の中留がアルコール分を補って醸し出されたものである。

やはり香りと等価交換でどっしりと重く、飲みごたえ抜群である。鶴岡八幡宮へ連なる参道で食べた焼きたての濃い口醤油が塗られたせんべい。濃厚な味わいである為、舌の中頃を過ぎるとやっとアルコールのインパクトを感じ始める。そのまま舌に広げると香ばしい香りが一層楽しめる。そういえば泡盛もせんべいも原料はお米である。 

炭酸割り

炭酸水との相性はなかなか良い。炭酸割にすると香りが立つ事が多いのだが、このNo041は水割りにほぼ近い味と香りである。そのため、気分によって水割りにするか、炭酸割にするかの選択肢が与えられる。夏の暑い時期ならハイボール。冬の寒い時期なら水割りはどうだろうか。私なら飲みはじめの一杯目は炭酸割りで、その後は水割りを楽しむ。 

オンザロック

思わず「うまい!」と声を上げてしまうだろう。新酒特有のケミカルの様な香りが抑えられ、うま味と甘みだけが口の中を駆け回る。黒糖やバニラの甘みの後に、醤油で表面を焦がした焼きおにぎりの香りが酒飲みの興奮を高める。荒焼の、それも沖縄の窯で焼かれたぐい飲みで頂くともうそれだけで至福の時間である。 

総評

今回テイスティングしたNo41は中溜と後留のみをブレンドした設計であり、予想通りの「こってり」酒質であった。一般的に初溜に近い方が軽やかで華やかな酒質。後留に行くほど濃厚で雑味が強い酒質となり、中留は雑味のないスッキリとした酒質になる。因みにウイスキーはこの「中留」のみを原料とし、樽の力を借りて旨味と香りを添加する。No41はスッキリ×こってりである為、こってりの個性が引き出され、雑味部分がかき消された酒質となっている。 

通常は開発室でしか存在し得ない「蒸留段階別のブレンド比率の違い」を消費者と共有したいという故・大城氏の思いの詰まったシリーズである。大城氏が急逝したため、No1~No41で終了となった。筆者はその全てを保有し試飲しているが、本当にそれぞれの個性が面白い。蒸留する泡盛を蒸留度数ごとに分けることによって、含有する成分を分け、それをブレンドすることで、イメージする酒質を作り上げることができるという手法を具現化し、ユーザーと共有した大城氏の大胆な発想には本当に驚嘆する。願わくば、もうしばらく大城劇場を堪能していたかった。 

株式会社津波古酒造 

住所:〒902-0076 沖縄県那覇市与儀2丁目8−53
電話番号:098-832-3696
代表者名:津波古 章 
ホームページ:https://tsuhakosyuzou.com/ 

Text by 儀部 頼人(Yorito Gibu)