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延々と泡盛を飲み続ける!? 宮古島の「オトーリ」文化 〜後編〜

お酒と文化

前編では、オトーリの基本ルールをお伝えしました。
では、オトーリ文化の現場はどうなのか、実際にオトーリを体験しないと分からないかと思います。

そこで、宮古島出身で幼い頃からオトーリに触れてきた私の体験談を交えて解説していきます。 

オトーリが始まる

宮古島はお祝いが多い島でもあります。ナーフィー(生誕100日祝い)、入学祝い、卒業祝い、合格祝い、正月、結婚祝い、成人式、スラブ打ち(新築にコンクリートを流すお祝い)…etc.  
産まれてから、ライフステージが変化する毎に様々なお祝いがあります。そしてその都度、家には大勢の大人が集まり、オトーリが始まるのは当然の事。お祝いとセットの儀式とも言えます。 

宴会が始まり、ある程度座席が埋まってくると、「氷持ってきて」「ピッチャーも」という指示が発令されます。これがオトーリの始まる合図です。 

この時、人によってはチェイサーとしてお水やお茶を手元に用意します。 
そして、オトーリを回す際、必ず必要なセットがあります。 

オトーリ4種の神器

オトーリ 4種の神器

[神器その1] 1升瓶に入った泡盛

お祝いごとにはゲストが1升瓶を持参してくる事が多いので、それらを有り難く使います。一晩で23本空けた、という知り合いもいたほど。お祝いの場は、入れ替わり立ち代わり大勢の人が来るので、大量の泡盛が消費されます。 

[神器その2]大量の氷 

オトーリを回す際ひとつのグラスを使うのですが、グラスの中には氷が常に9分目まである状態がベスト。2人に注げばすぐに氷が小さくなるので、オトーリ中は氷のお代わりが絶える事はありません。 

[神器その3]水 

前編でもお伝えしたように、オトーリ時は必ず水と泡盛を割った状態で回します。ちなみに、泡盛の原液と水が同じような容器に入ってくる場合が多く、割る担当者は匂いをチェックしながら慎重に配合する姿がよく見受けられます。 

[神器その4]ピッチャー 

飲食店で見る水やお茶が入った容器を使います。泡盛、氷を、水を混ぜ入れたピッチャーとグラスを持ちながら、親はオトーリを進めていきます。 

これらが揃ったら、いよいよスタートです。 

「オトーリを回します」という言葉が聞こえてきたら、参加者全員は静かにして、親の方を見ます。 
大人だけではなく、遊びに夢中の子供も例外なく、オトーリの親の口上を聞く必要があります。 

オトーリ=福来る

基本的に宮古島のおじさん達はとんでもない酒豪なので、とにかく終わらない! 
静かになって終わったかと思ったら次の周回が始まり、いつの間にか親も一周。 
ろれつも怪しいくらいに酔っ払った大人が何かを話してはお酒を飲むという行為は夜中まで繰り返されるのが日常でした。 

「お祝いって感じだな〜」と感じる瞬間でもあります。(笑) 

そんなある意味幼い頃から身近に見てきたオトーリが、島外だと恐れられている飲み方だと知ったのは、沖縄本島へ進学してからでした。 

「オトーリという宮古島の酒の飲み方がヤバいらしい」 
「宮古出身者がその昔酒を飲み干したせいで、現在も出入りを禁止している店があるらしい」 

そんな噂とも都市伝説ともつかないようなエピソードを数多く耳にしました。 
父母世代によると、似たような体験談がいくつも飛び出してきたので、当時の宮古島出身者の酒豪エピソードは史実のようです。 

60代以上と飲むと、オトーリを回すスピードと泡盛の濃さが濃厚なので「お手柔らかに・・・」と事前申告するのがオススメです。宮古島の居酒屋に行くと、突然盛大な拍手が聞こえてくる事があります。親が口上を述べた後は必ず全員で拍手をするので、これはオトーリを回している可能性が非常に高いです。 

オトーリに遭遇したら、お祝いをしている場に遭遇したということを意味するので、「幸せをお裾分けしてもらった」と幸せ気分で受け入れてくださいね。 

Photographs & Text by 佐和田はるか(Haruka Sawada)