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築90年超の重要文化財で造られる泡盛『國華』と名物杜氏、津嘉山酒造所入門編

酒造所

小さな島国の沖縄には50弱の酒造所があり、希少性の高い蔵元がいくつかある。 

その中でも絶対訪れて欲しい酒造所が沖縄県本島北部にある「津嘉山酒造所」だ。 

津嘉山酒造外観

名護市市街地から一歩中に入り静かな住宅地の一角に、大きな敷地と赤瓦の建築物が姿を現す。
古さと新しさが融合し何故か時間が止まったような、タイムスリップしたような錯覚さえ覚える。そんな酒造所を本日はご紹介しよう。 

国の重要文化財の建物で造られる琉球泡盛『國華』 

昭和3年に建てられた主屋と麹屋からなる寄棟造りの木造瓦屋根の建物は、2009年6月30日、国の重要文化財に指定された貴重な建物(敷地面積600坪、建物は合わせて340坪、現存する赤瓦葺き屋根を有する木造建築で最大規模の建物)となる。 

明治以降の西洋の近代的な造りや本土の文化も積極的に取り入れられ、当時の沖縄住宅の歴史や文化を知る上で良好な形態を留めている。(トートーメー(仏壇)がなく、玄関が設けられている。離れに敷居の高い部屋があり書院造りとなっている。当時では珍しくトイレや風呂場が家の中にある等。) 

塀の弾痕後を見ても分かるように建物が大きいからこそ戦火を撒逃れ、敢えて残されたとのでは?と思われる爪痕が敷地内には数多く残されている。 

建物を修復するに至り、酒造りに大事な味わいが変わらぬよう防腐剤や防具処理の薬を塗らず、4億1千万円の費用と8年の歳月をかけて大事に復元してきたのが、剥き出しになった接ぎ木の柱をみても十分に伝わるだろう。 

是非、見応えある津嘉山酒造所を訪れ、自分の目で確かめ歴史を感じて欲しい。 

去る2020年11月には、中庭にある琉球庭園が国の重要文化財にめでたく指定され、津嘉山酒造所の守り神とも云われる100年超す立派な黒木と沖縄地図を模った池は風情があり、季節折々の渡り鳥が訪れる。(直近に隣接する建物が全焼する火事が起きたが黒木が守ったお陰で津嘉山酒造所の建物は無事なのだ!) 

希少で貴重な泡盛造りを今も固持する津嘉山酒造所 

杜氏の秋村氏は気さくにこちらの質問に答えてくれる。

「津嘉山酒造所のお酒の味ができるのは、ここには蔵付きの菌が宿っている。ここで造るからうちのお酒が造れる。そして、古酒(お酒を3年寝かせると古い酒と書いて古酒(クース)という)が入った甕は1個1個形が違う。ブレンドはしてないので一甕ずつ味わいが違い個性豊かだ。」 

ならば、全部の甕貯蔵泡盛を一通り揃えて味比べしたくなる泡盛ファンは多いはずだ。 

夏場に蔵を訪ねてみると、長年の歳月を経た甕からメープルシロップの甘い香りが漂い、酒蔵を包み込む時があるそうだ。うーん、その至福な瞬間に酒蔵を訪ねてみたくなる。 

泡盛の一般酒(3年未満の寝かした酒)は華やかさやフルーティーな果実香がするが、熟成され古酒になっていくとバニラ香やメープルシロップ、カラメルやチョコレート香の甘い香りや味わいがしてくる。多くの人が泡盛に魅了される理由のひとつだ。 

主屋の裏手に構える現工場では、お米750キロ(30キロ×25袋)を蒸して黒麹菌(400グラム)を散布し、米麹を造る。それから醪タンクに水・泡盛酵母・米麹を入れ、季節によって異なるが約2週間掛けて発酵させ醪を造っていく。機械化が進む現代、蒸す機械の回転ドラムから米麹ができる三角棚まで、三角棚から醪タンクまでの運搬作業を手作業で行っているのは小さな酒蔵だからこそ。大変だがとても希少だ。 

次は、出来上がった醪を蒸留する工程について。その工程については、昔からの工場を使用している。1回の蒸留時間に3時間を要し、5回に分けて蒸留していくので3日掛かる。 

蒸留の仕組みを説明しよう。蒸留タンクにアルコール度数約18度の醪を入れる。配管をつたい醪に約80度の蒸気を吹き付ける。熱せられた醪は蒸気化し、蒸留器上のワタリをつたい冷まされ、気体が液体に変り、アルコール度数約80度~40度の泡盛が出来上がる。 

津嘉山酒造所は、その工程でのお湯を利用して、昔の人はお風呂に入っていた。画期的だから工場と風呂場がとなり合わせの作りになっている。 

蒸留したての泡盛が入っているタンクからは、濃厚な漬物の香りがする。うーん、その香りはべったら漬けの香り。後からオイリーな香りも漂ってきた。 

「蒸留したての泡盛の味わいは、すごく辛い。高級脂肪酸といって、お米の油で白く濁っている。定期的に高級脂肪酸フーゼル油を除去することで味わいがまとまっていく。濾過についても手間暇かけてきた分、簡易的な濾過で済む。」

しつこくなく余韻が短い、でもふくよかで飲みやすい泡盛と感想を頂くそうだ。 

杜氏の秋村氏を無くして津嘉山酒造所は語れず! 

秋村氏は10時までに仕事を済ませ、10時~16時半(昼休み時間12時~13時)については、いつでも工場見学者の応対ができるような体制を13年間年中無休で続けている。 

そんな秋村氏に幾つか質問をしてみ。 

・余暇の過ごし方は? 

HPの掲載内容を更新、SNSでの商品情報を発信しています。(余暇もお仕事!これは余暇なのか?(笑)) 

・13年沖縄に住んでいますが沖縄の好きなところは? 

県民性。おおらかで優しく、よく笑う。
家族・祭祀を大事にする部分は、古酒を代々守ってきた部分に投影されているのでは。泡盛は県民性の鏡です。 

・蒸留後の醪粕は? 

畑の肥料や豚の餌に活用している。SDGsにも繋がる循環型。 

・新たな取組みは? 

換気が強烈、高濃度アルコールも造れちゃう!コロナ禍でも開放的な環境を利用して催し物を実施していきます。外国人相手の英語も今年は挑戦する。今後は、沖縄の若者を雇い、沖縄や名護の経済に恩返しをするため頑張ります。 

元気に人懐こい笑顔で答える秋村氏は「國の華と書いて國華、それはまさに秋村氏のことだ!」と思えるのだ。 

泡盛 津嘉山酒造

津嘉山酒造さんの特別な泡盛は、こちらで詳しくご覧いただけます。

【合資会社津嘉山酒造所】 

主要銘柄:國華、六諭、華こよみ、香仙 
住所:〒905-0017 沖縄県名護市大中1丁目14-6
電話:0980-52-2070
HP: http://www.awamori-kokka.co.jp/ 
Facebook:https://m.facebook.com/TsukayamaAwamoriBrewer/ 
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泡盛百科:https://okinawa-awamori.or.jp/distilleries/tsukayama/ 

text by 浦添さとみ