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泡盛と酒器:泡盛をさらにおいしくする、生活に馴染む琉球ガラス

お酒と文化

沖縄を代表する伝統工芸といえば、陶器のヤチムンや染織物、琉球漆器などがありますが、なかでも人気が高いのが “ 琉球ガラス ” です。青や緑、紫などの美しく透明感のある琉球ガラスのグラスやお皿などは、手掛ける職人や工房によってデザインやサイズなどが異なり個性豊か。『琉球ガラス工房 清天』では、普段使いできる、生活の中に馴染む琉球ガラスを作っており、泡盛を飲むのにとっておきのグラスも揃っています。オーナーであり、職人でもある松田清春さんに話を伺ってきました。

一から作り上げた工房から生まれる琉球ガラス

清天入口

本島中部・読谷村に工房を構える『琉球ガラス工房 清天』は、2000年12月に「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の一つとして登録された、座喜味城跡の近くにあります。

静かな集落にあり、オーナーで職人でもある松田さんが自ら土地を整え、廃材なども利用しながら一から作り上げた工房です。 琉球ガラスは、一つの商品が完成するまで、ドロドロに溶けたガラスを吹き竿に巻き付け成型したり、吹き竿から息を吹き込んで膨らませたりと、いくつかの工程を経て手仕事で作られます。長年培った経験をもとに、一連の作業がスムーズにできるように作られた工房は、松田さんのアイデアと琉球ガラスへの想いが詰まった、温もりある工房です。

琉球ガラスとは?

琉球ガラス概要

沖縄において、ガラス製品は明治の頃から作られ始めており、当時は生活必需品で使う透明の薬瓶などをメインとしていました。現在のように、工芸品としての価値が高くなっていったのは戦後以降。米軍から廃棄されるコーラなどの空き瓶を再利用しグラスなどが作られ始めると、ワイングラスや花瓶など、アイテムの幅が広がりを見せ、同時に装飾などのデザインにも個性が見られるようになります。そして、現在のように色の展開も多い、琉球ガラスが増えました。琉球ガラスは、廃瓶を利用して作る工房、ガラスの原料を利用して作る工房があり、色の展開やデザインなどもさまざまです。

中学校卒業後、すぐ琉球ガラス職人の道へ

松田さん
松田さん

松田さんが琉球ガラスの職人となったのは、中学校を卒業した翌日から。松田さんの祖母が琉球ガラス工房で働いていたのをきっかけに、祖母が勤めていた工房の社長さんにお願いして入社したと言います。その後、別の工房でも職人としての経験を積み独立。自身の工房『琉球ガラス工房 清天』を持つことになります。

当時のことを聞いてみると、「入社直後はガラスわけ、たまとりなどが中心。(吹き竿から息を吹込んだり、形成するような作業は、)入社して8年ほど経つまではさせてもらえなかった。作り方も教えてもらってないよ。見よう見まね。先輩がやってることを見て、記憶して、作りながら覚えていった」と、話します。 技術や感覚、ものづくりとの向き合い方など、一から細かく教えてもらえるわけもなく、入社後から見て記憶してきたことを試す日々。下積み時代を糧に職人という仕事と向き合い、琉球ガラスを作り続けてきた松田さんの職人歴は、今年で43年。琉球ガラス一筋で、ここまで歩んできました。

惜しみなく技術を伝授しながら、ものづくりを極める

清天のグラス

『琉球ガラス工房 清天』の琉球ガラスは、「世界はほしいモノにあふれている(NHK)」などのテレビで紹介されることもあり、言わずと知られた工房です。県内外問わず、ホテルやレストラン、アパレルブランドなどからのオーダーによる琉球ガラスの製造も受けており、知らずしらずのうちに、『琉球ガラス工房 清天』の琉球ガラスに遭遇している可能性もなきにしもあらず。

『琉球ガラス工房 清天』から生まれる琉球ガラスに魅了され、また、松田さんの技術に引き込まれ、同業の職人が技を教えてほしいと訪れることもあるのだとか。そんなとき、松田さんは惜しみなく一通り工程を見せると言います。

「ほかの工房の職人さんが来て、これどうやって作るの?って聞かれたら全部教えるよ。(工程も)全部、見せる。そして、作らせてあげる。教えるのが好きで、教えることによって、自分も予習、復習ができる。そしたら、もっと上手になる」と、笑顔で話します。

松田さんが作る琉球ガラスには、人柄そのものも表現されているようで、滑らかな曲線や包み込むような優しさがあふれています。

職人であり続ける理由。ものづくりの魅力

清天の琉球ガラス

『琉球ガラス工房 清天』で作られる琉球ガラスは、普段使いできるグラスやお皿、花瓶など。

松田さんは、「作品ではなく、飾るものでもなく、普段使えるものを目指して作ってる。だから、買ってくれるお客さんには、『飾らないで使ってください。そしたら、良さが分かる。使って割れたら、また買いに来てね』って伝える。(琉球ガラスは、)使わないと価値がないからね」と、話します。

快晴の炎天下の下ともなると、窯の熱もあって工房のなかは蒸し風呂のように。同じ場所に留まることなく、場所を移動しながら作り続け、ときには同じものを何個も作り続けるときもあるのだとか。

一つひとつの琉球ガラスと対等に向き合う姿をずっと見ていると、職人としてものづくりをする心構えにブレがあると、とてもじゃないけど魂のこもった琉球ガラスは作れないと感じさせられます。そこには、同じ作業の繰り返しとはいえ楽なことは一つもなく、ものを生み出す大変さ、自分自身との戦いでもあると感じました。それでも、『琉球ガラス工房 清天』から琉球ガラスが生まれ続けるのは、『琉球ガラス工房 清天』の商品を手に取るお客さんがいて、そこに職人としての喜びがあるからこそ。

「買った商品を気にいって、再度買いに来てくれるお客さんがいる。割れたから同じのが欲しいと言って、来てくれるお客さんも。みなさん使って、よかったから来てくれるからね。反応がすぐ分かるのは、職人としての喜び。東日本大震災があったとき、『津波で流されてグラスがなくなったから、同じグラスがほしい』と手紙が届いたことがあってね。大変なときに、グラスのことを思い出してくれて、また欲しいと思ってくれたのがうれしかった。だから、お代もいただかず、同じのをすぐ送ったこともあった」。

松田さんの話す、“ 作品ではなく普段使えるものを目指している。飾るものではなく使うものを作る ” 。

手に取るお客さんの反応を肌で感じることができ、『琉球ガラス工房 清天』の琉球ガラスが、一人ひとりの生活の中に溶け込んでいく。ここに、松田さんのものづくりの魅力がありました。

ものづくりに必要な “ 絶対形状 ” とは !?

ガラスの炉
ガラス成形

琉球ガラスを作るとき、大切にしていることは何かを聞いてみました。

「きれいに、やさしく、商品の形を整える、揃えることを大切にしてる。ガラスとか形あるものを作る、ものづくりする人には “ 絶対形状 ” が必要。ピアノで例えると絶対音感だね。見た目でそのサイズのものを作り上げたり、ガラスを巻き取るときもガラスの量を見た目で巻き上げないといけないから。自分が見習いに教えるのは、『ガラスと友達になりなさい』って教える。そしたら、どんなものでも作れる。(職人、ものづくりというのは、)永遠勉強。いかに同じ物を作るか、同じカタチのものを作るか。そして、新しいものをどう作るかだね」。

ぜひ『琉球ガラス工房 清天』へ

清天店内

『琉球ガラス工房 清天』から生まれる琉球ガラスは、ガラス製品の美しさを感じる商品ばかり。見る角度によって表情を変えるだけではなく、手に持ったときの馴染み具合や、飾らないシンプルさが見ていて飽きません。棚にきれいに並ぶ、青や緑、透明などの輝きある琉球ガラスを目の前にすると、どの商品をプレゼントしよう、どんな料理を盛りつけよう、どんな使い方をしようかな……と、想像が膨らみます。

工芸品と聞くと、ちょっとお値段も気になりますが、“ モノの価値 ” をお金で判断するのではなく、作り手である職人や工房のストーリー、商品そのもののストーリーにも耳を傾けながら、手に取ってみてはいかがでしょうか。より、商品に愛着が湧いて、愛おしくなります。 工房の隣には、ショップも併設されています。ぜひ、『琉球ガラス工房 清天』の温もりある琉球ガラスに触れてみてください。

<工房情報>
琉球ガラス工房 清天
住所:沖縄県中頭郡読谷村座喜味1352-1
電話:098-958-1346
営業時間:9:00~18:00(緊急事態宣言が出ているときは~17:00)
琉球ガラス作り体験:2,000円 (発送は体験後、4日~約2週間ほど)
※緊急事態宣言が出ているときは体験不可

Photo&text:三木愛海