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【お勧め泡盛・島酒】バーテンダーズチョイス ~田神(常圧)~

泡盛

那覇市泉崎でモルト・泡盛古酒専門店 Bar Tasting Clubを営む、バーテンダー儀部頼人が珠玉の島酒をテイスティングしながらご紹介する企画「バーテンダーズチョイス」

神谷酒造 田神(常圧)26度500ml(希望小売価格 減圧・常圧2本入りセット5,500円) 

県内唯一の日本酒メーカーの泰石(たいこく)酒造(うるま市)と、泡盛メーカーの神谷酒造所(八重瀬町)が連携し、日本酒の酒かすを再利用して蒸留した粕取(かすとり)焼酎「田神(タヌカン)」を数量限定で発売。粕取焼酎の生産販売は県内初。日本酒の1回の仕込みに約400キロの酒かすが生じるといい、大部分を産業廃棄物として処分しているとのことだが、神谷酒造により日本酒と泡盛のハイブリッド酒として生まれ変わった。 

どの様な味がするのか早速テイスティングしてみたい。 

水割り

飲む人によっては遠慮したいと思われるケミカル系の香りが水で割ることによって薄まり、飲み手が期待しているお米の甘い味を楽しむことができる。やはり口に含んだ後の中盤からアフターまで「田神・常圧」の特徴であるマンゴーの香りが楽しめる。日本酒を製造した後の酒粕からマンゴーの香りが出るという事実に、発酵の不思議を感じる。

ストレート

香り

初めに中国の「白酒(パイチュウ)」の様なケミカルの香り、最後に柔らかく甘い香りが現れるが、これは私の感覚で「田神(減圧)」の3倍くらいの濃さである。そして特筆すべきは開いてくると夏の日差しをたくさん浴びたマンゴーの香りが現れることである。その他に、原料である酒粕そのものの香りを強く感じられる。

いつも記事で取り上げる43度の泡盛に比べると、30度という度数なので、口に含んだ瞬間のアタックは優しいと感じるが、ボディーにはしっかりと飲みごたえがある。そこにお米由来の甘みが現れ、しばらくすると贅沢なマンゴーの香りと入れ替わる。そしてそのマンゴーの余韻は長く、優雅な時間をとことん楽しめる。 

炭酸割り

先ほどから頻出するマンゴー香であるが、炭酸割りが一番その香りを楽しめる。「田神(減圧)」の方はスイカジュースであったのに対し、こちらは完全にマンゴージュースである。今年の夏は、通常の「シマー(泡盛)」だけではなく、田神シリーズもビーチに持ち込み、バーベキューをしながら「飲むデザート」を味わってほしい。

オンザロック

ケミカル感とマンゴーの香りが交互に訪れる。通常は氷で冷やすことによってケミカル感は抑えられるのだが、「田神・常圧」に含まれるこれらの香り成分の量は「規格外」なので、ロックにしてもしっかりと感じられる。飲み口にやや渋みが混ざり、はっきりと塩気を感じられる様になる。アフターではお米由来の甘い味を楽しめる。 

総評

最初に「田神・減圧」をテイスティングした後での試飲となったが、個性がはっきり分かれる形となった。減圧蒸留の方はやはり軽い飲み口でウリ科の果物を連想する味わいであったが、常圧蒸留の方はこってりとマンゴーの味わいであった。しかしながら骨格は酒粕を想起させるものである為、やはり兄弟なのだと認識させられる。もしも飲む機会があればぜひ両方を同時に頂いてほしい。蒸留法によってこれ程の酒質の違いになるのだ。 

粕取焼酎とは日本酒を作った残りカス、酒粕で造った焼酎である。これはワインの絞りカスで造るイタリアのグラッパ、フランスのマールと同じカテゴリーである。人類は余り物でも捨てずに利用することで、ウマい酒を造ることに成功したのだ。まさに循環型と言えるのではないだろうか。 

社名 神谷酒造所 

所在地:〒901-0403 沖縄県島尻郡八重瀬町字世名城510-3
TEL / FAX:098-998-2108
WEB:https://awamori.site
代表者 神谷 正彦
創業 1949年1月1日 

Photographs & Text by 儀部 頼人(Yorito Gibu)