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【お勧め泡盛・島酒】バーテンダーズチョイス ~原酒太平15番44度~

泡盛

泡盛メーカーの中でも「知る人ぞ知る」隠れメーカーの津波古酒造。ほとんど宣伝などをやらないので、津波古酒造周辺に住んでいる人ですらその存在に気付かないほど。  

製造もほぼ一人で行っているマイクロディステラリー。ツウ好みのしっかりとした泡盛を作っており、泡盛マニアの間では再注目の蔵元。  

しかしながら去年、残念なことにその一人で製造を担当していた杜氏が急逝した。それ以来製造は行われていない。プレミア必至の蔵元である。  

今回は各蒸留段階を5つに分け、それぞれの比率を変えてブレンドし、無加水で44度に調整した「原酒太平シリーズ(全41種)の「原酒太平(015番)」をテイスティングしてみたい。ブレンド比率は「初留側← 10:10:10:40:30 →後留側」である。 

ストレート 

原酒太平

香り

基本的には原酒は荒濾過(限りなく無濾過)である為、濃厚な香りとなる。グラスに注ぎ鼻に近づけていくと、分厚い旨味成分を感じさせる芳香の風圧が押し寄せる。黒糖や、バニラの甘い香りにコーン菓子の様な香ばしさが加わり、さらには濃い緑黄色野菜の青みまでもが現れる。 濃縮感たっぷりの香りを堪能してほしい。 

新酒なので、熟成からくる芳醇さはないが、米由来のうまみ成分たっぷりと感じる。ほぼ無濾過に近いので、熟成の為の原料となる高級脂肪酸(油分)なども、舌の上でこってりと感じられる。初溜から後留までまんべんなく原酒がブレンドされているため、バランスが良い。 

水割り

口に含むと、ほのかな甘さにべっ甲飴の様な香ばしさも感じる。ボディーは長く、安定した甘さが続く。フィニッシュはやや雑味が加わるが、今後の熟成の為にあえて濾過していない成分がそう感じさせる為であり、現時点で善し悪しの評価をすべきではない。 しかしながらあえて評価をするならば「これだけ雑味成分があると言うことは、熟成させると化ける」と評価する。 

炭酸割り

苦みと有機溶剤の香りが引き立ち、ボンドや接着剤などの化学物質感があまりに強く出すぎる。単刀直入に言うと個人的にはあまりお勧めしない飲み方である。せっかくの酒をあえてこの飲み方で飲む必要はない。しっかりと自宅の酒蔵に納め、酒がボトルの中で育っていく様を想像しながら熟成の時を待って欲しい。 

オンザロック

コーン菓子の香りが引き立つ。一瞬泡盛であることを忘れさせる感じが面白い。このコーン菓子、おこげの様な香りは、後留部分になるにつれて多く現れてくる成分による為で、このNo015は後留部分も多く含まれるためこの様な味わいになるのだろう。厚みのあるボディーに、後を引く余韻が印象的である。  

総評

今回テイスティングしたNo15は初溜から後留まですべての段階の原酒を使っているため、通常製造されている伝統的な泡盛の酒質に近いものである。軽やかで華やかな初留の感じから、こってりと雑味のある後留部分の感じまで余すところなく感じることができる。このシリーズは熟成による変化を楽しむ酒であると同時に、「自身が育てている酒」を仕次する際に、欲しい酒質を選ぶことができるという画期的な商品である。

通常は開発室でしか存在し得ない「蒸留段階別のブレンド比率の違い」を消費者と共有したいという故・大城氏の思いの詰まったシリーズである。大城氏が急逝したため、No1~No41で終了となった。筆者はその全てを保有し試飲しているが、本当にそれぞれの個性が面白い。蒸留する泡盛を蒸留度数ごとに分けることによって、含有する成分を分け、それをブレンドすることで、イメージする酒質を作り上げることができるという手法を具現化し、ユーザーと共有した大城氏の大胆な発想には本当に驚嘆する。願わくば、もうしばらく大城劇場を堪能していたかった。  

株式会社津波古酒造 

住所:〒902-0076 沖縄県那覇市与儀2丁目8−53
電話番号:098-832-3696
代表者名:津波古 章 
ホームページ:https://tsuhakosyuzou.com/ 

Text by 儀部 頼人(Yorito Gibu)