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泡盛と酒器:伝統をリスペクトしつつ生まれる琉球ガラス。”個”を貫くglass32

お酒と文化

沖縄本島北部・名護の市街地から少し離れた場所で工房を営むのは、glass32オーナーの具志堅充さん。2021年10月には、工房横にショップもオープンしました。glass32の琉球ガラスは、再生ガラスを利用して作られます。基本となるのは、クリアな琉球ガラス。シンプルなデザインで、生活の中に馴染むグラスや皿などを作っています。

サーフィンが趣味だと話す具志堅さんから生まれるのは、繊細で美しい、唯一無二の琉球ガラスです。今回は、作り手である具志堅さん、そして、奥さんの具志堅佳子さんにもインタビュー。作り手と、いちばん近くで具志堅さんが作る琉球ガラスを見続けている佳子さんからの視点で、glass32から生まれる琉球ガラスについて話を伺いました。

glass32のキーワード “再生”

琉球ガラスglass32

サーフボードが工房の隅に立てかけられているglass32。オーナーを務めるのは、サーフィンが趣味と話す、具志堅充さんです。県内工房の数か所で経験を積み、琉球ガラスの技を習得。2014年、再生ガラスを使用した琉球ガラスを製作する工房を立ち上げました。

再生ガラスを利用し作られる琉球ガラスは、シンプルなデザインで繊細なもの。太陽の下だと、一層、輝きを増します。

具志堅さん「捨てられてた、捨てられる廃ガラスを使って、琉球ガラスを作っています。使いやすいもの、邪魔しないもの……、料理を引き立てるようなシンプルな器やグラスとか。琉球ガラスは、ちょっと派手なものが多いけど、あまり派手にはせず、(生活の中に)馴染みやすいものを、と思ってます」。

佳子さん「glass32は “ 再生 ” がキーワード。昔からある再生ガラスを用いた琉球ガラスを作りたい、って想いから、工房を立ち上げました。SDGs(持続可能な開発目標)って言葉が出てくるずっと前から、『本来ならば捨てられるものを再利用したり、買ったものを長く使う時代がくる』って、思ってたみたい。普段から、あまりモノを捨てないし、家具とかも廃材をもらったりして部屋にフィットするものを作ったり。ショップにあるドラム缶の棚とかも手作りしたもので、用途に合わせてぴったりと仕上げるから、毎回、驚かされます。“ 昔をいまに見てる ” んでしょうね。だから、再生ガラスを作った琉球ガラスを、ずっと作り続けられているのかな』。

神経を集中を集中させて作り上げる琉球ガラス

琉球ガラスglass32
琉球ガラスglass32

琉球ガラスを作るときは、季節関係なく屋根のある屋外で製作します。夏ともなると、窯がある工房内の温度は高温に。そんな環境の中で、黙々と琉球ガラスを作り続ける、具志堅さん。一連の流れを見ていると時間が経つのを忘れてしまうほどで、徐々に形を変化させていく琉球ガラスに引き込まれいきます。

素人目線で見ると、迷いなく道具を操り、職人ならではの感覚と手先の細かな動きで、自由自在に琉球ガラスを作り上げているように見えますが、職人としての悩みや迷いは、常につきまとっていると話します。

具志堅さん「すべてが難しい。ずっと悩みながらやってる。『どうやったら思う形になるのか?』とか、毎回、毎回、悩みながら……。ちょっとした温度の差でも、違ってくる。(gjass32の琉球ガラスは、)薄いガラスだったりするので、仕上げのときとか一瞬で固まる。だから、本当、全体的に難しい。全体的に神経を使いながら作っています」。

日々進化していく、職人の技と作品

琉球ガラスglass32

毎回、慎重に、そして神経を集中させ、一つひとつの琉球ガラスと向き合う具志堅さんを、そばで見ている佳子さん。近くにいるからこそ、職人としての姿、そして、具志堅さんが生み出す琉球ガラスの変化なども、感じています。

佳子さん「気負ってなくて、SNSとかもまったくやらない。他の人の作品とかも見ないから、生まれてくるものは、すべてオリジナル。いま、8年目ですが、同じグラスでも、くびれの位置をちょっとずつ変えたりして、自分のしっくりいくカタチに変えてるらしいです。だから、オープン当初から作ってるグラスを何年後かに再度見た、当時から知ってくれている方に「洗練されましたね」って言われたこともあって。試行錯誤していくうちに、ぴたっ!とハマる、ここ!っていう完成形が出来上がる瞬間があるんでしょうね」。

具志堅充を語る上では外せない “ 青の洞窟 ”

琉球ガラスglass32

これまでに、具志堅さんが世に送りだしてきた数ある琉球ガラスのなかでも外せないのが、一目見ると黒。違う角度から見ると群青のような色合いが特徴の琉球ガラス “ 青の洞窟 ” です。再生ガラスが持つ特質をカバーするために生まれました。

佳子さん「青の洞窟は、前の工房にいたときに生み出したもの。琉球ガラスは、作る過程で、どうしても捨てるガラスが出てくる。そのなかには、ゴミが混じってたり、色のムラがあったりするんです。捨てるガラスをどうにかして作品化できないか、って考えてできたのが、青の洞窟。黒なら、ゴミが混じっても分からない。この黒は、『具志堅ブラック』って、呼ばれてます。琉球ガラスは、華やかなイメージだから、当初は売れるわけがないって言われてました。でも、認知されて、いまでは同じようなものも増えて。いまあるのは、工房を立ち上げてからのデザインのもので、自分が使いたいものを商品化したようです」。

青の洞窟は、具志堅さんが琉球ガラスを生み出す中で大切にしていることが詰まった作品の一つ。ほかの琉球ガラスも同様、さまざまな再生ガラスを利用することで、捨てられるはずだった廃ガラスに新たな息を吹き込み、蘇らせています。

琉球ガラスの伝統を守りながらも、新しいものを生み出す

琉球ガラスglass32
琉球ガラスglass32
琉球ガラスglass32

ショップに並ぶ、琉球ガラスの種類はさまざま。クリアや水色、緑、茶色、紫、青、黒などのグラスや皿、リングスタンドなどで、グラスと一言で言っても、ワイングラスや泡盛が合いそうなグラスなど多種多様。ときには一点ものも並んでいます。具志堅さんが、何度も試行錯誤を重ね完成した、悩み抜いた末にできた琉球ガラスです。

具志堅さん「インスピレーションを受けるパターンはいろいろ。基本、何も考えてないけど、いきなり、ぱっと浮かぶ。ひらめいたら、すぐ作ってみるっていう繰り返し。常に悩みながら、試行錯誤しながら。ほかの人に作れないようなもの、自分にしか作れないものを作りたい」。

佳子さん「いらないもの、捨てるものを、もう一度使う。琉球ガラスを作ってきた先人、先輩をリスペクトして伝統を守りつつも、ほかの人がやってることとは違うことに挑戦してる。『琉球ガラスのカタチに囚われず、具志堅充にしかできないもの、これ琉球ガラスですか?って、言われるようなものを作る』っていうのがglass32。あと、流行りたくないそうです。一気に流行ってしまうと落ちて行くのが早くて、さらに上を目指すために息切れしてしまうって。ものづくりの追求をし続けながら、緩やかに一歩一歩進めていくそうです」。

glass32を立ち上げたときから、再生ガラスを使った琉球ガラスを作ること、完全なオリジナルを生み出すことを貫いてきた具志堅さん。『新たなことに挑戦している人たちへのリスペクトを持ちながら、琉球ガラスを作ってる』と、佳子さんが話しますが、具志堅さん自身もまた、琉球ガラスと向き合う姿勢や生み出される作品に影響を受けた琉球ガラス職人から尊敬され、一目置かれる存在となっています。

琉球ガラスとまっすぐ向き合い作り出される、唯一無二のオリジナルを、ぜひ手にとってみてください。

<具志堅充さんProfile>

具志堅充(ぐしけんみつる)。沖縄県出身。県内工房で工場長を務めるなど、経験を積んだ後、独立。2014年、glass32設立。「具志堅ブルー」とも呼ばれる琉球ガラス「青の洞窟」など、再生ガラスを使った琉球ガラスを製作。工房内にあるショップほか、県内クラフトショップなどで販売。

Photo&text:三木愛海