金武酒造4代目がガイド解説。泡盛造りの基本から裏側まで<後編>
酒造所
1949年の創業以来、金武のサキヌマー(酒飲み)たちの喉を潤し、こころを満たしてきた金武酒造(きんしゅぞう)。
未来の4代目となる常務取締役・奥間尚利(おくま・なおみち)さんに金武酒造第1工場をご案内いただきました。
<後編>です。 ※前編はこちら
<取材日> 2021年11月12日・12月14日
泡盛の製造工程 ー 金武酒造第1工場
2つの工場を有する金武酒造。
製造現場となる第1工場は、子どもたちが元気に駆け回る金武児童公園のすぐそばにありました。
1.洗米、浸漬、蒸きょう(じょうきょう)
最初に案内されたのは、階段を上って3階。 3階には回転式ドラム自動蒸し器(ドラム)が2基並んでいました。

こちらのドラムで浸漬(米を水に浸して水分を吸収させる)、洗米(糠を落とす)、水を切ったあと米を蒸します(蒸きょう)。これが泡盛づくり一日目の工程です。

「蒸すときは、米をまんべんなく蒸せるようにドラムを回転させて米を平らにし、蒸気が逃げないようにドラムの網目を下に向けます。100℃くらいになっている蒸米を送風して40℃まで冷ましてから、黒麹(くろこうじ)を散布し、一晩寝かせます」と奥間さん。

「種麹(たねこうじ)となる黒麹は、北谷(ちゃたん)の石川種麹店さんの麹菌を使っています」と冷蔵庫に入っていた黒麹を見せてくださいました。
種麹とは、文字通り「麹づくり(製麹)」のもとになる麹菌。 金武酒造では、1トンのお米に対して黒麹を200g散布するそうです。

「胞子が黒く見えることから黒麹と呼ばれています。クエン酸を分泌する黒麹は酸性となるので雑菌が入らず、暑い沖縄でも腐敗することがありません。一方、日本酒などに使われる黄麹は酸をつくらないので腐敗しやすいため、日本酒は冬に酒造りが行われます」
と奥間さん。
泡盛造りに欠かせない黒麹、初めて拝見しました。文字通り黒い粒です。

ドラムの傍らには泡盛の原料となるタイ米の米袋が積み上げられています。
「酒造協同組合がタイから一括購入したタイ米を、3ヶ月に一度必要な量だけ組合から購入しています。
米の購入量と製造のために使う量を帳簿に記載しています。 この米はあくまで酒造りに使うためで、食用は禁止されています」。
泡盛の原料も細かく管理されているのですね!
2.製麹(せいきく/せいぎく)
3階から階段を下りると、2階には三角棚が2つ並んでいます。
3階のドラムで一晩寝かせた蒸米は、ドラム下方にパイプをつなげて2階の三角棚(製麹機)へと移動できる効率的な構造になっています。
蒸米の種麹をさらに繁殖させて、麹(こうじ)をつくる製麹(せいきく/せいぎく)という作業、これが泡盛づくり2日目の工程です。

「三角棚に米麹を広げ、40~41時間ほど寝かせて繁殖させます。繁殖の際に熱を発しますので必要に応じて内部を空気冷却しますが、冷えすぎると繁殖が遅くなりますので、適切な温度を維持するようにしています」と奥間さん。

いまはまだ米の白色が美しい三角棚。温度計の黒いラインが目に入りました。
3.仕込(しこみ)
泡盛づくり3日目は、2階の三角棚で繁殖させた米麹を1階のタンクへ移し、水と酵母を加えます。
米麹に水と酵母を加えて発酵させて「醪(もろみ)」をつくることを「仕込(しこみ)」と言うそうです。
「酵母は『泡盛101号』を使っています。液体の酵母もありますが死んだり雑菌が入ったりと扱いが難しいので、乾燥酵母を使っています。乾燥酵母は冷蔵庫で保存しており、1仕込ごとに40度のお湯で戻して使います」と奥間さん。

仕込に使われる水は「仕込水」と呼ばれます。
「むかしは生産量がいまの半分以下でタンクはもともと500キロ用タンクでしたが、継ぎ足していまのタンクの大きさになりました。いまのタンクは3,000リッターほどあります。
米麹1トンに対して仕込水は1,700リットル。水を貯めるにも時間がかかりますから、前日からタンクに水を張っておきます」。

「発酵には硬水が良いとされていますので、仕込水はウッカガー系の硬水です」と奥間さん。
ウッカガーとは「金武大川」のことで、金武町が誇る水量豊富な名水井泉です。金武町へ訪れた際はぜひ立ち寄ってみてください。

「醪(もろみ)」とは、米麹に仕込み水と酵母を加えて発酵させている状態のこと。
「仕込みタンク」、「醪タンク」とも呼ばれる大きなタンクで、これから醪を20日間かけて熟成させます。

「混ぜなくても良いと言う人や上澄みだけ混ぜる方もいますが、蛇管(冷却用の螺旋状になっている管)がある真ん中だけ冷えていますので、うちは1日2回、全体的にがっつり混ぜています」という奥間さん。
ねずみ色の醪を大きく撹拌されている姿は、まさに泡盛づくりを目の当たりにしている! と感じました。
発酵の音がプツプツと聞こえてきそうなタンクからは、“これから旨い酒ができるぞ~!”とばかりに、酸味混じりのアルコールの強い香りがぷーんと漂ってきました。
4.蒸留
20日間かけて熟成させた醪は、蒸留機で蒸留され、泡盛の原酒となります。
金武酒造には、首が短い1号機と、首が長い2号機、2つの蒸留機が置かれていました。


「首の短い方は、重い成分も入るので重厚な酒となりますので、古酒向きです。 長い方は、重い成分が上がりきらないので、軽やかで飲みやすい酒ができます。いわゆる新酒向きです」。
奥間さんの説明を伺いながら2つの蒸留機を拝見。 2号機の首は天井まで高くのびていました。

蒸留機から抽出された原酒は、パイプでつながっている「メートルボックス」と呼ばれる透明な装置を通過して地下の検定タンクへ流れていきます。
メートルボックスのなかに浮かんでいる酒精計(アルコール計)から抽出された原酒のアルコール度数がを知ることができ、蒸留状態がわかるそうです。

「どこまで蒸留するか、蒸留を止めるタイミングは、メートルボックスをチェックして判断しています」と奥間さん。
メートルボックス、初めて拝見しました。なんだか「酒造りしてますー!」って感じがしますネ。
5.貯蔵・熟成
「蒸留してできた原酒のアルコールは平均50度くらいです。
泡盛はアルコール度数が45度以下でないといけませんから、検定タンクでアルコールが44度になるよう加水調整します。 だいぶ昔は、加水するときに税務署が来て立ち会っていましたが、現在は帳簿の提出だけです」。

アルコール度数を調整するために加える水は「割水(わりみず)」と呼ばれています。
「割水は軟水が良いので、このときは軟水器で軟水にした水を使います。 水は大事ですよ。 泡盛を水割りで飲まれる際にも、ぜひ軟水で割ってください。その方がより美味しく泡盛をいただけると思いますよ」。
奥間さんから貴重なアドバイスをいただきました。

第1工場でアルコール度数を調整された泡盛は、第2工場へ運ばれ、貯蔵・熟成されます。
「貯蔵期間が短いとガス臭がしますから、一般酒も1年間は寝かせています。
できるだけ熟成させるために、瓶詰めの直前に泡盛を冷却して異物を除去します。
ただしアルコール43度のものは冷却せず粗濾過にしています」
と奥間さん。
一般酒も1年間は寝かせて出荷されるあたりは、年間生産量の半分以上が古酒用に貯蔵されるという金武酒造さんならではのこだわりを感じました。
泡盛製造における裏作業のひとつ「試験蒸留」
泡盛製造における裏作業とも言える、必要な作業をひとつ教えていただきました。
それは、沖縄県内のいずれの泡盛酒造所でも行われている「試験蒸留」という作業です。
奥間さんにご案内いただいたのは、第1工場のすぐそばに併設されている小さな建物。
内部には理科の実験に使いそうな機器が置かれていました。「アルコール分析用タイマー付蒸留機」と記されています。

「試験蒸留は略して”試留(しりゅう)”と言っています。
本番の仕込みタンクの醪を少量を取って、試験的に蒸留して醪のアルコール度数を計ります。
お酒の出来を確認するためや安全に製造出来ているかを確認するために行うためのものです」
と奥間さん。

酒づくりには、見えないところにもたくさんの手間と暇が掛けられている。
奥間さんのとても丁寧なご案内で、泡盛づくりのひとつひとつの作業がもつ意味、金武酒造のこだわり、泡盛づくりの世界を垣間見ることができました。
<しーぶん>
「見学にいらっしゃる方には、酒造所の見学は初めてですか? 何回目ですか? と尋ねています。酒造所にはいろんな方がいらっしゃいますので、その方の知識や理解度に合わせて酒造所を案内するよう心掛けています」と未来の4代目となる常務取締役・奥間尚利さん。
お酒は大好きだけれど、飲むばかりで、泡盛酒造所見学は初めてに等しい私にも、わかりやすく、至極丁寧にご説明いただきました。
<前編>で綴りましたが、酒を醸す過程に、映画『君の名は。』にも登場する「口噛み酒」を引き合いにされた解説は非常にわかりやすくて素晴らしい。そう感じたのは、神事に口噛み酒があった沖縄だからなのかもしれません。
奥間さんのおかげで泡盛づくりの基本をしっかり勉強させていただきました。奥間さん、いっぺーにふぇーでーびたん。
金武酒造さんの酒造所見学、とってもオススメです。
もちろん、金武酒造の泡盛・古酒もオススメなのは言うまでもありません。
今宵は「龍(たつ)」で、カリー!

金武酒造さんの泡盛はこちら。
Photographs & Text by 安積美加(Mika Asaka)