記事

米島酒造 <後編>手間を増やし、米のひと粒ひと粒に向き合う酒造り

酒造所

米島酒造株式会社(よねしましゅぞうかぶしきかいしゃ) https://yonesima.jp/ 
創業:1948年 
〒901-3123 沖縄県島尻郡久米島町大田499 
TEL:098-985-2326 
<酒造所所見学> 予約制(コロナ禍のため流動的になっております。) 

1948年の創業以来、久米島のサキヌマー(酒飲み)たちの喉を潤し、こころを満たしてきた米島酒造。 

那覇から久米島を訪れ、米島酒造株式会社4代目の代表取締役・田場俊之(たば・としゆき)さんにお話を伺いました。 <後編> です。

前編はこちらから>>

 <取材日> 2021年11月18日

米島酒造のこだわりと特徴 

■ 主役にもなるが、脇役にもなる酒造り
■ 島の人も島外の人も、誰もが立ち寄れる酒造所 
■ あえて手間を増やし続ける酒造り

あえて手間を増やし、米のひと粒ひと粒に向き合う酒造り 

1.洗米

「2代目である祖父・田場庄次郎(たば・しょうじろう)の代から一緒に酒造りをやっています。自動化するのではなく、祖父の代から手間を増やしているんですよ」と田場社長。

泡盛 米島酒造

「最近、醸造機器メーカーから洗米機を購入しました。半自動でひと粒ひと粒洗えるようになっています。洗い加減を変えてみたりしながら、じっくりと米を観察して、ひと粒ひと粒、ゆっくりと洗います。洗いで軽い、重い、米の特徴や雰囲気がわかりますので、米の特徴に合わせて蒸し時間も変えています」。 

泡盛 米島酒造

ドラムで自動洗米できるところ、あえて一昔前に立ち返って手間を増やされた4代目。 
「焼酎・泡盛の酒造所でこの機械を購入されたのはお宅が初めてですよ、と言われましたね。おかげでいままでより1時間ほど作業時間が増えました」と苦笑い。 

沖縄県内の蒸留酒メーカーで唯一活用されている醸造機用の洗米機。最初にお米に触れる「洗い」の段階から、米のひと粒ひと粒に真摯に向き合って作業される姿を思い浮かべました。 

2.浸漬・蒸きょう(じょうきょう) 

洗米を終えるとドラムへ移し、500キロの米を浸漬、蒸きょう(米を蒸す)。蒸きょう時間は米の特徴に合わせて都度時間を変えています。 

蒸米を適温まで送風で冷まして種麹である黒麹を投入します。黒麹は2代目・田場庄次郎さんの代から、沖縄本島・北谷町(ちゃたんちょう)にある「石川種麹店」の黒麹だそう。 

泡盛 米島酒造

ドラムに貼られた説明書きには英語も併記されていました。 

泡盛 米島酒造

その後の工程の説明書きにも、日本語と英語が並びます。 

「島の人も島外の人も、誰もが立ち寄れる酒造所に」と語られた想いが説明書きにも表れています。 

3.製麹(せいきく・せいぎく) 

泡盛 米島酒造

蒸米をバケツで三角棚に運び、温度を管理しながら一日掛けて米麹をつくります。 

4.仕込 

泡盛 米島酒造

三角棚の米麹をバケツで醪(もろみ)タンクへ移します。タンクは1400リットル。米、米麹の移動もすべてが手作業のバケツリレーだそう。相当な体力仕事です。 

泡盛 米島酒造

米麹、久米島の良質な水、酵母菌(乾燥酵母「泡盛101号」)をタンクで合わせ、20~26日間ねかしてアルコール発酵させます。その間、1日3回、タンクの醪を上層、下層、中層と撹拌します。 

泡盛 米島酒造

忘れてはならないのが、蔵に住み着いている「蔵内酵母(くらうちこうぼ)」の存在。 

「蔵内酵母が、その蔵のオリジナルの酒を生み出す一翼を担っているんですよ」と田場社長。 

泡盛づくりには、「差し酛(さしもと)」と呼ばれる作業があります。その方法は多種多様で各蔵の企業秘密だそう。ごく端的にいうと、最初に作ったもろみの一部を汲み出し、種酵母として次回のもろみに添加する作業です。差し酛を繰り返すことで、蔵内酵母がより強くもろみに現れるそうです。 
うーん。泡盛造りってとっても奥が深い。まさに科学です。

5.蒸留 

現在の蒸留機は2代目・庄次郎さんのときに新調されたそうで、撮影はご遠慮いただきたいとのこと。代わりに南蛮甕やサンニン(月桃)と仲良く並んでいた初代の蒸留機を撮らせていただきました。 

 「この辺りにも蛍が飛ぶんですよ」と4代目。 
なんという風情。飛び交う蛍と蒸留機を眺めながら一献傾けたいとつい妄想してしまいました。 

泡盛 米島酒造

「泡盛の味や香りの決め手は何でしょうか?」と素朴な疑問を田場社長にお尋ねしました。 

「醪管理も大切ですし、さまざまな要素が絡み合っているので難しいのですが、大まかに言って、決め手は蒸留だと思います。 
蒸留機のカタチによって渡りやすい成分が変わってきますし、蒸留機に何割の醪を入れるのか、半々なのか、全部なのかでも変わります。 
蒸留は圧×時間がポイントとなるのですが、周囲の気温にも左右されますので、冬の蒸留と夏の蒸留ではわいてくる時間も違ってきます。 
わいてきた酒の渋みや辛味など、利き酒で出来栄えをチェックしながら、アルコール何%で採るのか判断していきます」と田場社長。 

泡盛の決め手となる蒸留は、非常に神経を使う難しい工程であることが伺えました。 

6.ろ過・貯蔵 

蒸留された原酒は地下タンクへと流れます。お酒によるそうですが、原酒はアルコール50度ほど。 

原酒を度数調整した泡盛は、ろ紙を挟んだろ過機で濾過され貯蔵タンクへと送られます。この際、ろ過の具合もお酒によって変えているそうです。 

泡盛 米島酒造

「アルコール度数が35度を超えるお酒は甕(かめ)で寝かせます。甕貯蔵で熟成した場合は芳醇でまろやか、味わいに厚みを与えます。 
ステンレス貯蔵の場合は軽快でさっぱりとした軽やかな感じになります。 
甕で寝かせた酒を(ステンレス)タンクに混ぜても良い影響がでますよ」と田場社長。 

泡盛 米島酒造

田場社長の案内を終えてタンクが並ぶ一室を出る際、ふと、子守唄のような音量でなにかが聞こえてきました。 
「泡盛も人と一緒で、刺激を受けながら成長・熟成していくと考えています。ですから泡盛にクラシック音楽を聴かせるために流しています」。 
耳を澄ませると、クラシックの美しい旋律が泡盛の眠る室内を満たしていました。 

目指すは “自分たちだけの味” ー 米島酒造らしい酒づくり 

「酒造りの最盛期は11~4月。酒造りは、冬場の方がコントロールしやすいので冬の方が向いています。 
冬は米の甘みがでる柔らかいフルーティーな酒ができ、夏は夏に合わせて淡麗、酸が強めの酒ができます」と田場社長。 

現在はスタッフ2名、4代目を含め造り手が3名、全体で7名が稼働しているという米島酒造。 
季節の移ろいによって変化する水の硬度、気温にも影響される蒸留。 
米のひと粒ひと粒に向き合い、さまざまな工程で細心の注意を払いながら、あえて手間を増やしながら酒造りが行われています。 

「主役にもなるが、脇役にもなる酒造りを目指しています。 
沖縄はみんな長い時間飲みますから、長く飲んでいても飲み疲れしない酒で、口に含んだときの含み香がよく、程よく余韻がある酒がよいですね。 
 
売りやすい味や競争に行くのではなく、流行りに乗らず、自分たちだけの味を造りたい。 
ゆっくりゆっくり味を変えたり、行ったり、戻ったりしながら」。 

泡盛 米島酒造

島酒の原料の米をひと粒ひと粒、手間をかけて洗うことから始まる米島酒造の酒造りは、よんなーよんなー(ゆっくりゆっくり)、てぃーちなーてぃーちなー(ひとつひとつ)今日も久米島で行われています。 

<しーぶん> 

「差し酛(さしもと)」という酒造り用語は米島酒造さんで初めて耳にしました。 
実はもう少し詳しくご説明いただきましたが、驚きに値するこだわりは企業秘密。ですから、米島酒造のすべてをここに綴ることは叶いません。 
ぜひ米島酒造を訪れ、酒造りのさらなるこだわりを直に伺ってみてください。それが久米島へ訪れる楽しみのひとつとなることでしょう。 

今宵は「米島」で、カリー!  

Photographs & Text by 安積美加(Mika Asaka) 

↓↓ 米島酒造の泡盛はこちらから↓↓

泡盛 米島酒造